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John Barry
(1933―2011)
イギリスの映画音楽作曲家、指揮者、
『ナック』(1965)あたりまでのバリーの映画音楽はエレクトリック・ギター、木管、マレット楽器(木琴やビブラフォンなど、音板を撥(ばち)で叩く楽器の総称)などのソロを巧みに生かしたクールなジャズ・サウンドを持ち味としていたが、アカデミー最優秀作曲賞および同主題歌賞に輝いた『野生のエルザ』(1966)から饒舌(じょうぜつ)なストリングスを中心に据えたアレンジを好むようになる。ふたたびアカデミー賞に輝いた『冬のライオン』(1968)で教会旋法を独自にアレンジしたスコアを披露、クラシック音楽への造詣(ぞうけい)の深さを示した。このほか『国際諜報員(ちょうほういん)』(1965)、『真夜中のカーボーイ』(1969)などに、楽器固有の音色を生かしながらハーモニーを印象深く響かせる、バリー独特の手法の好例を聴くことができる。1970年代以降はオーケストラの客演指揮者としての活動が増えたせいもあり、作風は一層クラシカルなものに傾いていった。『レイズ・ザ・タイタニック』と『ある日どこかで』(ともに1980)で伝統的なオーケストラを用いたスコアは、バリーがイギリス・クラシック音楽の正当な嫡子(ちゃくし)であることをみごとに物語っている。
こうしたロマンティシズム溢(あふ)れる映画音楽作品を発表する一方、1980年代には『白いドレスの女』(1981)、『コットンクラブ』(1984)で自らのルーツであるジャズを再検証する興味深い仕事を手がけた。その後、陶酔的な弦楽セクションと雄大なホルンの響きを前面に出した『愛と哀しみの果て』(1985)と『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)でアカデミー最優秀作曲賞を受賞し、後期ロマン派の音楽スタイルをそのまま踏襲したバリーの作風を、広く一般に印象づけた。
1988年に重傷を負ったため再起が危ぶまれたが、映画音楽作曲の本数は確実に減ったものの、1990年代も1年に約1本のペースで仕事をこなしていた。1975年(昭和50)に来日。
[前島秀国]
『Eddi FilegelJohn Barry; A Sixties Theme (1998, Constable and Company , London)』▽『Geoff Leonard, Pete Walker, Gareth BramleyJohn Barry; A life in Music(1998, Sansom, Bristol)』